プロフィール:福岡県育ち IT系会社勤務。フリーランスで動画編集・アニメーション制作など。趣味は読書と映画とラグビー観戦。
女の子らしい見た目で違和感もなかった。おもちゃなどの好みは女児向け男児向け関係なく好んでいた。
今までは、自分が同姓を好きになるなんて思いもしなかったが、同性の先生に好意を抱く。その時は男性目線で意中の相手を見ていた。
大学入学を機に、今までとは違う新しいタイプの人とも接するようになり、ファッションにも変化が。しかし周りに合わせながらも徐々に違和感を感じるようになり、様々な格好を試してしっくりくる形を模索する。
性別の押し付けを嫌いながら、相手の性別によってコミュニケーションの方法を変えており、自分の中の潜在的な固定概念に気づく。
ノンバイナリーを経て、今は女性であると感じているが、その感覚にはグラデーションがあり、100%ではない。
見た目はごくごく普通の女の子で、違和感もなかったというまりぃさん。好みは男児向けも女児向けも関係なく楽しみ、交友関係も男女ともに仲が良かったようです。
グラフを拝見して、最初はかなり女性寄りに位置していますが、当時はご自身の中で性別に関する意識はあったのでしょうか?
おそらく時期としては小学校に入るか入らないかくらいの時期だったと思います。私が育った地域では、女の子は皆、長い髪をしていて、可愛らしい服を着ているのが当たり前という雰囲気でした。私も例に漏れず、母に毎日凝った髪型をしてもらってしていました。
外見としては“ごくごく普通の女の子”に見えたと思います。ただ、自分の感覚として、ものの好みなどは”真ん中”のような感覚でした。周りの女の子も好きなアニメやキャラクターが好きである一方で、いわゆる男の子が好きそうな戦隊ヒーローやスポーツアニメも好きでした。ピンク色も青色もどちらも好きだったんです。見た目は”THE 女の子”なのですが、好きなものは女の子らしさも男の子らしさも両方ありました。
ものの好みは兄弟などに影響している部分はありますか?
いや、ひとりっ子なので、そういう影響があるというよりも自然とそういう趣味嗜好になったと思います。小学校時代は戦うバトルヒーローものが好きで、ポケモンやドラクエなどのゲームをしたり、どちらかというと男の子が好きな漫画(ジャンプ系)を読んだりしました。遊ぶ相手の性別はそこまで意識しておらず、男の子とも遊んでいました。ものすごく女の子っぽいということではなかったです。
恋愛に関心もなかった学生時代から急に芽生えた先生への気持ち。何事にも肯定的な風土の学校で、先生への気持ちを通し様々な気づきがあったようです。
思春期に入ってから、自分の中で性別などに関するゆらぎのようなものは出てきましたか?
中学生〜高校時代は、漫画やアニメがすごく好きだったので、ほぼずっと漫画を描いていました。男女で付き合うことはせず、かといって女の子が好きというわけでもなく、そもそも恋愛に関心を持つようなことは少なかったと思います。周りの人たちもみんなオタクだったので、恋愛より漫画という感じでした。 見え方としてもどちらかというと、あまりイケてない女の子のような印象で、クラスにはファッション雑誌を読んで、お化粧を勉強してという人が多くなるんですけど、自分はそういうこともなく、ずっと漫画を描いてました。
そのような中で、転機になったことはありますか?
はい、高校のときに英語の女性の先生に対して想いが芽生えたんです。その先生が本当に綺麗で、スラっとしていて、ハキハキとした話し方をする方で、『すごい綺麗な人だな...』と思って惹かれていきました。
そのことをオタクの友達に話したんですよ。 『私、あの先生のこと好きかも』と。 そうしたら相手も否定せずに『ウケる』という割と好反応でした。そしてそのことを多分クラス中が知っていたんですよね。例えばその先生が授業で『じゃあこれ解いてみて』と私のことを当てるじゃないですか。 するとクラスの雰囲気が『おー!今日は当てられてるじゃん、いいじゃん、いいじゃん』という盛り上がりを見せていました(笑)。でもその先生はとても怖い人なんですよ。 宿題をやっていなかったら、立たされるんです。でも私は『立っとけ』と言われても、声をかけてもらって嬉しい!という感じで捉えていました。 そしてクラスのみんなすごいニヤニヤしているという不思議な高校でした
なかなか珍しい学校だったのではないかと思いますが、自由な校風というか、特徴的な学校だったのでしょうか?
私の高校は田舎のわりに自由でオープンな空気があって、恋愛や性に関する話題もそこまで言いづらいことはありませんでした。いろんなセクシャリティをオープンにしています!とまではいきませんが、男女で付き合っている人であれば『昨日、彼女が生理痛で』と話している光景もあり、そういう話を普通にできる高校生が多くいたんです。なので、”生理のことだから隠さなきゃいけない”だったり、”セックスの話は友達とはできない”だったり、女性はそんな話するなということも全くなかったです。
もちろんその先生とは何もなく、ずっと私が一方的にドキドキしていただけなんですが、その時に『あ、女の人を好きになるということって、ごくごく自然に起こるんだ』ということを感じました。それまでは同性を好きになったり、同性と付き合う人たちは特殊な人なのかな、ということを子供ながらに漠然と思っていました。例えば自分が女性と付き合うということを考えたら、『いや!ないないない!』と思っていたのですが、その時やその先生に関しては全くそういうことはなくて。 ああ、こういうことってあるんだと体感しましたね。でも、振るまい方としてはそこまで中性的や、特にボーイッシュだったりすることはなかったです。
自認に関して男性の方に振れているのは男の子になりたいという訳ではないのですか?
その英語の先生のことを考えるときは、自分は男役というかポジションとしては男性的な感じでした。先生の女性的な振るまいや肉体性が好きで、気持ち的には男性的というか、男性ホルモンが出ているようなそういう意識でした。
なるほど。普段はそういう意識じゃないけれど、恋愛において、かつその先生に対してとなると男性性を感じるんですね 。
そうですね。 でも、確かにあえて女の子っぽいことはしなくなった部分もあるかもしれないですね。身の回りのものをすごくシンプルにしていきました。男性/女性向けが無いような、無印良品などのステーショナリーにしたり、みんながつけていたからという理由でつけていたすごいデコられたストラップも、少し自分には違うかなと感じました。
幼少期は誰かをかっこいいと思ったり、可愛いと思ったり、そういった気持ちはありましたか?
恋愛の的な部分はあまり覚えていないのですが、小学校1年生の頃にバレンタインデーなどのイベントで男子にチョコをあげたりはしていました。『〇〇くんが好き』という気持ちはあったかもしれません。女の子を好きになったことはなかったと思います。でも恋愛感情がどういうものかあまりわかっていなかったので、友達という感覚が強かったと思います。
でも明確な恋愛感情を持ったのは高校の先生だったのですね。
それまで恋愛感情を意識していませんでしたが、この先生に関しては初めて性的に惹かれる感覚がありました。襟の近くが見えるとすごくドキッとしたり、いつものワンピースと違うものを着ていると気づいたり、自分が立たされてボーッとしている時は先生の脚が綺麗だなと考えたりしました。
初めての思いや、今まで意識していなかった同性への恋愛感情に悩みはなかったですか?
周りにカジュアルに話して受け入れられたので、悩みはなかったんです。オタクっぽい子も、体育会系のひとも、色んな人がいたのですが、そもそも恋愛や性の話だけではなくいじめ自体もなかったんですよね。校内ヒエラルキーがなく、どんな人も個を尊重されていたなと思います。