interview

男性らしさへの憧れはありつつも、女性であることに違和感はない。かっこいい女性の生き方を目指していく。

安藤エヌ
フリーライター
2025.9.5
バイセクシャルで女性にも男性にも恋愛感情を持つエヌさん。自身が女性であることに違和感はないものの、性別や性自認などに対して悩んでいる人に向けて自分で行動を起こしたいと考えているとのこと。エヌさんのこれまでについて話を伺いました。
安藤エヌ

日本大学芸術学部文芸学科卒。フリーランスライターとして2019年から活動。これまでの掲載先は Real sound、rockin'on、マイナビウーマン、ダ・ヴィンチ、主婦と生活社など。 セクシャルマイノリティ/ジェンダー分野に興味を持ち、クィア映画を積極的に鑑賞し、自費出版でオリジナルクィア小説を発行するなど、常に多角的な視点を持ち自分の言葉で発信することを信条としている。

ゆらぎのグラフ

振る舞ってきた性
性自認
性のゆらぎグラフ 1 2 3 4
  1. 女子の転校生に対してモヤモヤした、よく分からない感情を抱き、気になっていた小学生時代や部活の先輩に憧れていた中学生時代

  2. 女子しかいない女子校時代。振るまいも男性寄りになっていき、女性と付き合う。その経験がその後の人生に大きく影響を与えていった。

  3. 多様性の面でどうすれば属性での衝突を減らしていけるのかを考えている。学ぶことの大事さと女性として生きることの良さについて

  4. 悩んでいる人に対してのメッセージ。まずは言葉や何かであらわすということ。

  1. 女の子らしい見た目で違和感もなかった。おもちゃなどの好みは女児向け男児向け関係なく好んでいた。

  2. 今までは、自分が同姓を好きになるなんて思いもしなかったが、同性の先生に好意を抱く。その時は男性目線で意中の相手を見ていた。

  3. 大学入学を機に、今までとは違う新しいタイプの人とも接するようになり、ファッションにも変化が。しかし周りに合わせながらも徐々に違和感を感じるようになり、様々な格好を試してしっくりくる形を模索する。

  4. 性別の押し付けを嫌いながら、相手の性別によってコミュニケーションの方法を変えており、自分の中の潜在的な固定概念に気づく。

INDEX
  1. 『同性を好きになる』ということを理解することの始まりだった幼少期
  2. 振る舞いが男性寄りになる高校時代
  3. 世の中のラベリングと女性でいられてよかったと思う瞬間
  4. 物事を『昇華する』ということで人生がかわった
振る舞ってきた性
性自認

第3章 世の中のラベリングと女性でいられてよかったと思う瞬間

女性でよかった。生まれ変わっても女性になりたいと真っ直ぐにおっしゃるエヌさん。その心境について話していただきました。

エヌさんはラベリングに違和感はないとおっしゃっていましたが、まだ世の中にはびこるラベリングについて何か思うことはありますか?

今ちょうど選挙の時期じゃないですか。自分も投票して思ったのですが、やっぱり対立ってきついし、自分と異なる意見を持つ人の声は、すごく大きく感じます。どうすれば軋轢というか衝突のようなものを少しでも減らしていけるのかなと考えています。 でも結局は、個人個人が自分1人でできることをコツコツやっていくしかないのかなと思います。 投票が最たる例ですが、1人ひとりの意志が総意で集まって社会は変わるんじゃないかと、自分が意識して自分が変わっていくことが最優先かなと思うんです。

自分はいくらでも自分の意思で変えられるから、これからも私は勉強していきたいし、あまり視野を狭くしたくはないです。自分は性自認などについてあまり悩んでこなかったので、自認に対して悩んで苦しい思いをしている人のことを考えて、理解して、自分で行動を起こしたいと思います。今回、性のゆらぎのグラフを描くことを自分でやってみて思ったんですけど、可視化すると、自分にとってすごく発見がありました。『自分はこういう人間なんだ』というのをグラフで見ることによって、 発見や、新しい見方ができると思っていて、すごい素敵な試みだなと思います。

もしエヌさんが自分を抑圧しているものから解放された時は自認に変化はあるのでしょうか

そこは変わらないです。理想像はちゃんみなさんなんですが、彼女は女性だからこそかっこいいと感じます。だから生まれ変わっても女性になりたいですね。時代の変化やSNSなどの普及によって、昔よりも女性差別やジェンダーギャップについての認識が広まって、議論が活発な現代に女性になりたいって思えるのもすごいことだなと思います。それも私が差別をされてきていないからかもしれませんが。

かっこいい女性ということなんですね

女性ってだけで生きづらくなることもあると思うんです。すごく辛いことなのに、自分も女性でありながら何もわかっていなかったんだと痛感しました。

逆に女性でよかったと思うことは多いですか?

あります。すごく性格の悪い話になってしまうかもしれないのですが、女の子に好かれることですね。男性に嫌気がさした話を聞かせてくれる友達も多くて、やっぱり同性だと腹を割って話せることはあると思います。男性には見せない笑顔だったりを見られるのは正直優越感というか、自分が女性でよかった瞬間かもしれませんね。男女の考え方の違いからくる煩わしさ無しで話してくれているんだなと思うと嬉しいです。私も女子会とか大好きですし、女の子同士の会話や連帯感って結構いいなと思っています。女性同士でキャッキャするのも好きで、ガールズムービーとか好きです。

私は趣味で写真もやっているのですが、写真をやってると本当に顕著に感じます。女性のモデルさんと女性カメラマンで話していると、美容の話とか好きな服の話とかになるので、そちらの方が全然気楽だと言ってもらえます。

人との関わりの部分で、お付き合いしているときのことも伺いたいのですが、女性と付き合う時と男性と付き合う時は、自分の中で差がありますか?

適切な言葉が思い浮かばなくて、少し語弊がありそうなんですが、『愛したい』と『愛されたい』みたいな違いですかね。能動的か受動的みたいな。それが付き合う相手の性別で違うかもしれないです。

どちらが受動的でどちらが能動的なのでしょうか?

私の場合は両方あって、だからバイなんだと思うんですが、愛されたいし、愛してみたいというような感覚です。それがスイッチで切り替わるような感じですかね。どちらも楽しそうで、どちらも経験としてあると、とても人生が豊かになりそうだと思っていますし、それに抵抗がないというか。

男性の方がリードすることや女性が尽くすということにも違和感はないでしょうか?

それに対してもいいなと思う時と、いやだなと思う時があります。マウンティングはいやだし、優位に立たれたくはないけれど、個人的にはリードしてもらえたら悪い気はしないです。ちょうど良い塩梅というものがあるのかもしれませんね。

第4章 物事を『昇華する』ということで人生がかわった

今、悩んでいる人に向けて、文章や写真で自分を表現し続けるエヌさんらしいアドバイスをもらいました。

悩んでいる人に伝えたいことや、アドバイスなどはありますか?

私は創作することが生き甲斐ということもあると思いますが、、自分の人生のターニングポイントとして、物事を『昇華する』ということが大事だなと思いました。何かしら形にしたりすることによって、自分を客観視できたり、気持ちが楽になることはあると思います。誰かと喋るだけでもいいし、日記のように作品にしなくても、外に出すという行為だけで、結構気持ちが軽くなったりすると思うので、できる人はやってみてもいいんじゃないかと思いますね。

私も実際すごく生きづらい人生を送ってきたけれど、やっぱり創作というか、書くことが助けになっていると感じます。書いてなければ、すごく悩んでいたと思うので。

どういう経緯で書き始めたのですか?

大学は文芸学科というところにいて、その時から10数年ぐらい書き続けているんですが、その延長線上ですね。きっかけとしては、文学賞に出したくて、書き始めました。結局落ちたんですが、自分で本にしてみたいなと思って製本もしました。ウェブメディアなどに提出して掲載していただいてるのもあります

アウトプットするということは、大事だと思いつつ、書いたことのない人だと何を書いたらいいかわからない場合もあると思うのですが、どのようにして書かれていますか?

例えば日記アプリ(おすすめアプリ:muute )は私もやっています。ジャーナリングといって、診療療法のような感じで、書き出すことによってスッキリさせるような効果を感じています。でも自分たちが向き合わなくちゃいけないものというのは、そういう規模ではないこともわかっているんですが、まずは自分を振り返ったり、頭の中を整理するためにも脳内でも文字としても1回吐き出して見るのがいいと思います。

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